本シリーズでは3回に渡って、新規事業創出における検証と顧客開発、カスタマープロブレムフィットに向けた取り組みについてご紹介いたします。
・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない
・新規事業チーム内の共通認識を作りたい
・新規事業創出にあたる検証活動を理解したい
といった方々のお役に立てますと幸いです。
本シリーズ・新規事業創出における検証と顧客開発、カスタマープロブレムフィットに関する記事の一覧
カスタマープロブレムフィットとは
最初の検証活動であるカスタマープロブレムフィットについて考えていきましょう。
カスタマープロブレムフィットは、新規事業創出において「課題が実際に存在するか」「解決する価値のある課題であるか」を検証するプロセスです。事業のアイデアをもとに、定性調査・定量調査を重ねながら検証をすすめていきます。
まずは初期ターゲット顧客にフォーカスする
前章では「初期ターゲット」「成長ターゲット」についてご説明しましたが、ここからは初期ターゲットにフォーカスして考えていきましょう。
初期ターゲットは思い切り絞り込み、特定のニッチを狙うことを目指していきます。絞り込むことで得られるメリットは多いです。顧客のニーズが明確になったり、対象属性を絞り込むことによって製品やサービスの特徴をわかりやすく訴求することも可能になります。
さらに小さく絞り込むことで過剰なリソースや資源の分散を防ぐことができるためテストを繰り返しながら検証を行うことが可能になります。 顧客を絞り込むためには定量調査のみならず、定性調査も必要になります。属性を絞ったインタビューでも根源的な課題やインサイトが異なる場合、同じ属性であっても初期ターゲットにならない可能性があることに注意しましょう。
定性調査を繰り返しながら顧客像を明確にしていき、顧客のインサイトを深く理解していくといった活動が重要になります。ここからはカスタマープロブレムフィットに向けた取り組みをご紹介していきます。
カスタマープロブレムフィットに向けた取り組み①定性調査としてのヒアリング・インタビュー
ヒアリングとインタビューはどういう違いがあるのか?といった定義はここでは行いませんが、先に述べた通り初期ターゲットを発見するためにヒアリングやインタビューといった定性調査は非常に有効です。まずは話を聞いてみよう!という目的でも良いですし、初期ターゲットの仮説を構築する場合でも、立てた仮説を検証する場合でも、これらの手法は役に立ちます。
まず行いたいのは、立てた事業コンセプトや初期仮説について「そうした課題を持っている顧客が本当にいるのか?」という検証活動です。ヒアリングやインタビューといった聞き取り調査の際に注意したいのは「こういうサービスや製品があったら使いますか?」というダイレクトな質問をしないということです。これではせっかくの定性調査が台無しになってしまいます。
課題の周辺にどのような活動が存在し、顧客はどんな心理状態なのか、いつどこで行われ、影響範囲はどのくらいなのか、といったことを聞き出していくことを重視してください。こうした聞き取り調査を最低でも10名、理想的には30名以上行い、定性調査の分析を行なっていきます。
エクセルなどで結構ですので、聞き取り項目をリスト化し○×をつけていくといった表形式の分析や、どんなことが語られたのかをチームでシェアしながら付箋に書き込み視覚化しながら発散し、新和図法で傾向を分析する、などといった手法を経て、「私たちのサービスの初期ターゲットとなる人物とそのインサイト」を明確にしていきましょう。
カスタマープロブレムフィットに向けた取り組み②顧客を深く理解する・共感マップ
定性調査を通じて顧客像が明確になってきたら共感マップなどのフレームワークを活用し整理しましょう。ターゲットの置かれている環境や、その環境下で抱いている感情や思考を書き出すのが共感マップです。
何に共感しているか、彼らのやりたいことは何か、どんなことを見ているか...などを書き出していきます。最も重要なのは中央のペインやゲインを理解し、顧客のやりたいこと、クリアしなければならないジョブなどを洗い出すことです。共感マップはターゲット像をチーム内で共有するのにも役立つフレームワークです。
次回:顧客のインサイトを理解する
次回は「顧客のインサイトを理解する」についてご紹介させていただきます。
【参考書籍】
・秦充洋『事業開発一気通貫 』日経BP出版、2022年
・北嶋貴郎『新規事業開発マネジメント』日本経済新聞出版、2021年
・クレイトンMクリステンセン『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』ハーパーコリンズ・ ジャパン、2017年
・アッシュ・マウリャ『リーンスタートアップ成長戦略』 日経BP出版、2017年
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