STUDY_DESIGN&Business#01

「で?なんで必要なの?」と問いただされることが、ままある。

なぜデザインやブランディングがビジネスに必要なのかと、それが一体どういうメリットがあるのかと。
そういう意味合いの質問だ。そういった質問に答えることにはそろそろうんざりだと感じつつ、プロとしての説明責任も感じつつ、知りうるメリットを丁寧に紹介する。しかし残念ながら、そういう質問をされる方にはどんな説明も本質的な部分は伝わらないことが多い。

 

そういう時に決まって思い浮かべるのは下記のような仮のダイアローグだ。

「「醜いもの」と「美しいもの」どちらが欲しいですか?」という問いに対して、
「必ずしも美しいものが選べるわけではない。」きっとそういう答えが返ってくるだろう。
「「使いやすく醜いもの」と「使いやすく美しいもの」だとどうですか?」とさらに加えたところで、
「普通に考えれば「使いやすく美しいもの」だが、コストによる。」と返ってくるのだ。
「つまり「あなたが欲しいものは、使いやすく美しくコストパフォーマンスのよいもの」ですね?」

ユーザーの意思ははっきりしている。こんなことは聞くまでもない。
それを構想し実現するのがデザインの仕事にほかならないのに、それでもなぜデザインの必要性を改めて問いただされるんだろう?いや、原因はわかっている。

私たちは多くの場合、事前にその三方よしのデザインをイメージできないのである。

 

よいデザインを巡る議論、エフォートとコンディション

最近わかったことがあるが、「美しさ」「使いやすさ」「機能性」「コストパフォーマンス」という良し悪しを判断するいくつかの指標に対して、それぞれが両立したり三方よしとなったりが実現不可能とばかり思い込んでしまっている人は少なくない。
これはメンタルブロックというに近しい現象だが、もしかしたらこれまでの経験によるものなのかもしれない。(例のコンビニのコーヒーマシンの事例を持ち出して揶揄する人もいるかもしれない。)
ただ、それはこれまで「よいデザイン」に出会ってこなかっただけのようにも思えるし、それらが生み出される過程のデザインがベストエフェートでなかったのかもしれない。ただ断っておくと常に有意義な議論とは「だった」よりも「だろうか」であり、自己完結せず不断で連続するものだ。

そういう議論に終始する人がいれば、逆に問いかけてほしい「「だった」から、なんだ?」

 

デザイナーである私たちが忘れて欲しくないと願うのは、デザインはビッグイシューの解決をミッションとし、あらゆるケーススタディを踏まえて具体化され、あらゆるコンディションに左右されるということだ。
つまり、ケーススタディの多様さこそがデザインのエフォートの練度を上げ、コンディションの好悪が可能性の拡張と伸縮を決定づけるものである。この点についてはデザインにとって大変重要なため何度も繰り返し伝えたい内容である。

では良いデザインを生み出しビジネスに活かしていくにはどういうエフォートとコンディションが必要なんだろう。
今週私たちがシェアした記事の中から「デザインとビジネス」に関わるいくつかの記事を見ながら考察していきたいと思う。

 

価値の最大化という効能、再現性と拡張性について

実のところ「よいデザイン」をどうジャッジしうるかは一口には説明し難い命題である。それぞれに与えられたミッションが異なるため同じ基準で判断することができないというのが、その理由に尽きる。

その上で、デザインをビジネスでどのように活かしていくかを検討してみると、そのルートは多くない。私たちが考えうるもっとも効果的なルートは

「①2者(以上)間の関係性価値を最大化する」「②仕組み化する」「③その仕組みを拡張する」

である。簡単な図にすると下記のようなイメージになる。

 

この①~③を繰り返していく先にあるものは当然ながらそのビジネスのゴールであるが、「よいデザイン」とはその③の先にあるゴールから見た①の評価に他ならない。また、「よいデザイン」とは①にて生み出され、②にてより再現可能となり、③にてより広がりを生み出すものであることも忘れてはならない。さて、これをベースにいくつかの記事を検討していきたい。

 

●loft work:「デザイン経営」は来るべきイノベーションへの大きな起爆剤ー公開カンファレンス速報レポート

>> https://loftwork.com/jp/event/20180713_designkeiei_conference

今年523日に公開された「デザイン経営」宣言を元に開催されたカンファレンスのまとめであるが、報告書にはないいくつかの視点が収められているので紹介したい。

「デザイン経営宣言」本資料はこちら:http://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002-1.pdf

資料内での「デザイン」の定義は曖昧でいかようにも解釈できてしまうように思えるが、カンファレンスの中ではこのように言及されている。

「デザイナーは、人がその企業が提供する価値に触れた瞬間を想像します。その瞬間を形にするのが、デザイナーです。常に届ける対象である“人”の視点から価値を作り出すデザイナーを、企業経営の最上流において欲しい。イノベーションを起こすために、デザイナーの視点が重要になってきているんです」

これまでデザインシンキングにより広く注力されてきた「人間中心設計」的議論のようでもあるが、これは視点の話であると理解したい。上記で挿入した図の①が指す「2者(以上)」というのは人間対人間、人間対システム、システム対システム、システム対環境、環境対環境様々な対象関係を含む。デザインとはまずミクロの関係価値を最大化するために萌芽し、それを仕組み化することによってマクロ状況へ展開可能となる。ビジネス視点で言うなれば、仕組み化することによってようやく再現可能なテクノロジーとなり、収益化の素地となる。私たちはついぞ忘れがちであるが、その意味でデザインとは一種のテクノロジーであるはずだ。

そこから続く議論がさらに考察を後押ししてくれる。

「デザインはバランス。機能性や時代、コスト、企業の規制や設備をすべて考え、『このバランスがいいのではないか』と指摘するのがデザインなのではないかと思う」

という発言はまさに上記で挙げた「エフォートの練度」と「コンディションの好悪」に通じる指摘である。

エフォートの練度とは、デザインの「適用領域の広さ」に対する「対象への深い知識と理解」が関係する。
コンディションの好悪とは、デザインを実行する土壌としての「組織環境」と、そのデザインアウトプットの「リーチ・影響範囲」が関係する。簡単に言うと「エフォート=業務範囲の広さとそれに対する専門性」「コンディション=組織環境の部分と全体性」である。前者はそのデザインに挑むものの技量により左右されるが、後者は組織のシステム(その組織のデザインへの理解度および信頼度)に左右される。当然の様でもあるが忘れられがちなのは前者後者ともに「その会社・組織にとってどのくらいデザインが可能性と重要性を持って迎えられているか」に左右されるものである。その点で「デザイン経営」宣言の指摘内容は尤もらしいと言えるかもしれない。

つまり良いデザインを生み出し、ビジネスに応用するために①〜③をそれぞれの議論に当てはめるならば下記のようになる。

  • まず①2者(以上)間の価値を最大化するエフェートがあり、そのエフォートは個人と組織両者の働きかけによるものである。どちらかというと個人の力量が大きく影響する。組織はデザイナーに対し十分な材料と環境を準備する必要がある。
  • つぎに②では生み出したデザインを仕組み化しシステム化する必要があるが、ここでは個人のエフォートよりも組織のコンディションの影響の方が大きい。デザインが生み出した価値を、「組織の力」つまりシステムによって最大化する働きかけである。「デザイン組織」という単語をよく目にするがそれが作用するのは①と②である。
  • それから、②をさらに複数領域や別領域へ展開していくことで③のビジネスとなる。ここが「デザイン経営」である。

 

さて、#01はここまでにして次回はさらに「デザイン経営」を深掘りしていきたい。

 

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